有限会社日乃出化工 代表取締役 古郡 登 氏 (伊勢崎支部所属)

地域の環境を守るため率先して問題に取り組み、よりよい環境を作り出すことが、企業存続の道である

「会員企業訪問」の記念すべき第1回は、群馬中小企業家同友会の副代表理事も務めている(有)日乃出化工の古郡さんをお訪ねしました。創立は1985年12月、機械部品の洗浄、組立および輸送を業務としています。

創立から現在にいたるまで・・・

「たまたま私の友人がこんな仕事があるよって持ってきたのが始まりで・・・」と、いつも通り淡々とした口調で、時に人懐こい笑顔を覗かせながら古郡さんは話し始めました。

 「プレスした部品に油が付いているのをただ取ればいいという、ごく単純な仕事なのでできるんじゃないか、お客様はすぐ近所にあるし・・と言って始めたが、紹介してくれた友人も素人、私も素人。言われた設備を整えて執りかかってはみたものの、すべて不良品になってしまいました。切断した鉄板の断面は何も表面処理していないので油を取ればサビがでてしまう。何度も取引先に謝りに行った思い出があります。そんなことを2〜3年、試行錯誤しながらやっていましたが、このままではダメだと思い、よくよく洗浄のことを研究し突き詰めていったら、今の設備では100%不良になるという結論が出ました。そこで専門業者に設備を依頼し本格的に『洗浄』という分野で挑戦していこうと決心したんです」

 日乃出化工の洗浄方法は、1.トリクロロエチレン、2.アルカリ、3.酸 で行っています。機械で作った部品には油が付着しているので、次の工程に移る際、油が付いていると困る製品が搬入されます。日乃出化工の「洗浄」という業務は『先駆け』であり『専門職』であるため、新規参入してくる業者がいないというメリットがあります。大手企業では工程のなかで薬品に浸けて油を取る作業を行っているところもありますが、それには水質汚濁防止法・大気汚染防止法などの規制値をクリアするための設備投資費用や維持管理費用といったコスト負担が重く圧し掛かるため、やはり専門分野への依頼が多いのだそうです。
最近では2004年3月にISO14001を認証取得。金属部品表面洗浄処理のほか、ポリ容器洗浄、塗装膜の剥離、金属等の錆取りなども手がけ、環境に配慮した洗浄方法を常に視野に入れながら、オンリーワン企業を目指しています。

同友会で学んだ「自社の強みに特化する」

 「同友会には、かれこれ15〜16年ほど所属しています。その間いろいろなことを学びましたが、反面、もっと真面目にやっておけばよかった・・」そんな言葉から始まり、「やはりウチのメインの仕事は洗浄。その前工程・後工程の仕事をして付加価値を上げようと思ってやってきた。従業員もそれに伴い増員してきた。しかしある程度従業員数が増えてくるとやはりロスが出る。そのロスは業務全体で捉えた場合かなり大きな影響となる。先日、同友会30周年記念の際のコーセル(株)会長、飴久晴氏の講演内容を改めて読み返したら、そこに“中小企業は一つのことをこれ以上深く追求できないと思うくらいまで取り組むことが必要だ”と。そこまで出来たら初めて次の仕事に着手するのだと、そういった内容の話が掲載されていて・・つくづくホントだな〜と思いましたよ」
来年早々には大きな設備投資があり、より精度の高い洗浄が可能となり、環境面においても最高レベルになるとのことです。強みである『洗浄』に特化し、追及し続ける古郡さんの積極的な姿勢が感じられました。

経営指針と社員教育

 「経営指針は作ってよかったな〜って思います。会社が会社らしく変わっていっているという実感が持てます。また経営指針の勉強会に、幹部を出席させたことがありますが、そういった勉強会に触れさせるとやっぱりモノの考え方・見方に変化が見られる。従業員でありながら、経営者的な視線で見られるようになるんですね」そう感じ取った古郡さんは社員教育にも経営指針の勉強会を取り入れ、将来的には組織全体、みんなで作れる環境にしたいのだという。「継続的にやっていかないとなかなか定着しないけどね」経営計画も幹部が作れる仕組みにしたいとのこと。今までは古郡さんご自身が「管理する」という立場で作ってきたそうですが、それでは従業員の自発性を奪い、状況対応力を低下させてしまう。「任せることで従業員の成長を図りたいのだ」と。経営計画には古郡さんのこだわりでもある行動基準も盛り込まれている。「挨拶だとか・・5Sだね。基本中の基本。でもそれがなかなか出来ないんだよね〜。まあ、俺が一番出来てないんだけどね〜(笑)」

今後の展開

「ウチも来年から22年目に入る。最初の10年は無我夢中で仕事を取り、やってきた。次の10年はそれをいい形にして持続させるよう努力してきた。でも、もう今まで通りのやり方では行き詰まりを感じてきているので、ここからはもう一度原点に戻って再出発を図るつもりで取り組んでいかなければならない。将来の後継者にいい形で引き継ぐためにも、また従業員とその家族が安心して幸せに暮らしていけるようにするためにも、迂闊な経営は出来ない。環境はどんどん変化している。一昔前なら好不況の波があって我慢していれば景気がよくなることも期待できた。けれど今は違う。下手をすれば経営も成り立たなくなってしまう。状況に対応しながら創造していかないと…。そういう意味でも幹部教育には力を入れていかないとね。」先に挙げた来年早々の大きな設備投資のほか、社名変更・組織体制の改変を機に有限会社日乃出化工はまた新たな変革の時を迎えそうだ。

(記事;広報委員M)